内山 博の基地ミニ講座



2008/12/11
「海兵隊がやってきた!―釧路に行って思うこと―」

執筆者: 旅システム (1:47 pm)
 先日、11月29・30日に、釧路で行なわれた「米海兵隊移転訓練反対全道集会」と「基地問題交流集会」、要請行動へ参加してきた。そこで知ったこと、認識が深まったことなど雑感を、つれづれなるままに書こうと思う。

 そもそも移転訓練とは――

 95年に沖縄で米兵による少女暴行事件に対して約10万人の県民集会が行われるなど、沖縄県民の基地への怒りが爆発し、沖縄の米軍基地・訓練の見直しが(一応)はかられることとなった。その96年12月のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)最終合意の中で、「沖縄の負担軽減」を口実に矢臼別(北海道)、王城寺原(宮城県)、北富士(山梨県)、東富士(静岡県)、日出生台(大分県)の5ヶ所の陸上自衛隊演習場へ、沖縄のキャンプ・ハンセンに駐留している第3海兵師団・第12連隊の訓練を「移転」することが決まったのである。

 そして今年、日本最大の演習場である矢臼別に12年目にして10回目となる実弾射撃訓練がやってきた。去年も今年も、実際に訓練が行われたのは矢臼別だけである。訓練の固定化も危惧される。
 移転訓練はなにも沖縄県民の負担軽減になっていないばかりか、それ自体軍事力強化である。今回米海兵隊は矢臼別に、230名の兵士と「155ミリ榴弾砲・M777」2門を持ち込み、小火器訓練や、イラク戦争での使用疑惑のある白燐弾の訓練をも行なったとみられる。新型の155ミリ榴弾砲は、従来の2分の1の重量しかなく、ヘリなどでの輸送も可能なものである。つまり、例年よりも2カ月遅いこの時期に寒冷の地・北海道の矢臼別で米軍が「即応」性の高い訓練を行うのは、何よりも、アフガニスタンの山岳地での武器使用を想定してのことであると考えられるのである。これは決して深読みのしすぎではない。オバマ氏は、イラクからは手を引くがアフガニスタンには増派すると公言している。
 「在日米軍は日本を守ってくれるのだから」と、百歩譲って安保を容認してみたとしても許せない海兵隊―そもそも海兵隊は遠くに出掛けて行って戦争をする殴りこみ部隊なのだから、日本の防衛に必要なはずがない―が、アフガンで、イラクで人々を殺傷するための訓練を、北海道・矢臼別で行なっている。矢臼別の空は直接的にイラク・アフガンにつながっているのである。2日間を通じてこのことを改めて認識し、「矢臼別での米海兵隊移転訓練許すまじ」の思いを新たにした。逆にいえば、こうした訓練に反対する地道な抗議活動がやはりとても重要なことなのだと確信することができた。
 しかも、許せないのはそれだけではない。訓練の費用は日本政府が負担しているのである。税金の無駄遣いが大きく取りざたされ、満足な働き口もなく安心して病院で子どもが産めないような社会がある一方で、人殺しの訓練に私たちの税金が湯水のごとく使われているのだ。
 今年の移転訓練に関して特筆すべきもう一つの点は、情報公開がなにもなされなかったことである。事前の訓練内容説明や記者会見、訓練の公開も行なわれなかった(事後に装備の公開はされた)。米側は、質問等に対してホームページ上で回答するとしたが、当初は英文のみの部分もあるなど、説明責任を果たしたとは到底言えるものではなかった。地元首長や知事でさえも批判せざるを得なかったくらいである。
 札幌に戻ってホームページ上(http://www.okinawa.usmc.mil/Yausu/Index.html)で米軍の回答を覗いたところ、こんな答えがあった。
「WHAT IS THE LIBERTY POLICY FOR YOUR MARINES?(海兵隊員らに適用されるリバティの方針は?)」
つまり米兵の外出について聞いたところ、
「THE LIBERTY POLICIES ARE SET TO ENSURE THAT ALL MARINES CAN ENJOY THE LOCAL AREA AND BE SAFE. (リバティの方針は、隊員らが地域社会で安全に過ごすよう設定される)」と言うのである。
 米軍の訓練が行われて不安なのは、なにも実弾を扱うからだけではない。基地外での兵士によるトラブルや犯罪は、沖縄・広島の事件が記憶に新しいように、あとを絶たない。なのに、米兵の外出について気にするのは、米兵が「エンジョイ」して安全に過ごせるかどうかなのである。在日米軍が日本の国民を守る性格のものでないことがこれを見ても良くわかる。
 一体誰が私たちの平和を守ってくれるのだろうか。それは、「マリーンズ・ゴー・ホーム」と声を上げ、「自衛隊はアメリカの戦争の手助けをするな」との声を広げる、私たち主権者の草の根の取り組みでしか得られないのだ。
(佐々木 瑛)
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