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 旅システムさんのエントリ配信

2011/05/27
北海道商工団体連合会 三浦泰裕 氏――津波・大震災と原発被害のもとでの北海道経済

投稿: 旅システム (6:33 pm)
3月11日の震災は私達北海道の旅行業界にもものすごい影響がありました。
震災後の1週間で受けた取消しの数々。来る電話、来る電話ほとんどすべてが取消の電話でした。
会社ができて23年、経験したことのない出来事で、この先どうなるのか見当がつかない毎日でした。
北商連の三浦さんが、色々な業種の会員さんの状況をもとに、震災が道内の経済にどういう影響を与えているのかをレポートして下さいました。

(青木)


 5月18日の道新夕刊に、東日本大震災での道内での水産物の養殖被害額が174億円に上ることが報じられました。本紙の宮沢晴彦さんの論文でも明らかなように、なかでも八雲町の被害が103億円以上にのぼり、道内の被害額の大半を占めていることも明らかにされています。東北における津波・震災による被害があまりにも甚大なために、話題に上らなかった道内の直接、間接の被害が徐々に明らかになってきました。

〔26万人がキャンセル、北海道観光の損失は384億円に〕

 津波災害による道内での直接の被害は甚大なものですが、同時に震災後の地域経済への影響の広がりも、黙視できないものになっています。5月12日、日銀札幌支店は、観光産業への影響レポートを発表し、現在道内の観光業が遭遇している状況を明らかにしています。同報告によれば、震災後道内の宿泊施設のキャンセル数(〜6/30)は26万人、来道者の減少に伴う観光消費損失額は249億円、1次・2次波及効果を加味すると384億円の損失になる、としています。観光損失額の内訳は、ホテル・旅館業61億円(△16.3%)、旅客運輸業69億円(△14.8%)、飲食業37億円(△14.6%)、土産品等の小売業66億円(△12.4%)、温泉・スキー場などの入場料や施設利用料9億円(△12.1%)、その他7億円(△8.6%)となっています。さらに、これらの産業に働く人たちへの雇用の影響が消費を引き下げ、商業、サービス業などの需要の減少となり、2次、3次の負の波及を生み出します。すでに、海外の団体旅行客を相手に営業していた洞爺湖と阿寒湖の二つの大手ホテルが1年間の休業を決めています。企業の旅行代理業からの撤退も相次いでいます。海外の団体観光客を顧客の主力に据えていたススキノのカニ料理店も3か月の休業を決めています。4月以降、団体ツアー専門の北広島市の観光バス会社が倒産、ホテル倒産も3件起きています。北海道の観光業界は、リーマンショック以来の不況ですでに長く不振は続いていましたが、そこに追い打ちをかけたのが今回の災害ショックです。とりわけ先の見えない原発被害が、今後も長期にわたり海外の旅行者の再来道をためらわせ、道内観光復活の大きな阻害要因になりそうです。

〔飲食業界を襲ったショック〕

 津波・大震災後、日本全国一斉に広がった「自粛」は、遊興・飲食業に大打撃を与えました。3月、4月は、料飲業界が12月に次いで活況を呈する時期です。この時期、卒業、就職、転勤、退職など年度の変わり目を機会に人の移動が行われ、官公庁はもとより多くの会社、個人が歓送迎会を一斉に開きます。3月11日の震災は、まさにこの時期を直撃しました。ススキノ交差点の「ニッカ」のネオンが消え、北海道で最もにぎわう料飲街は火が消えたようになりました。帯広市のある飲食店の経営者は、「3、4月の売り上げは前年の5割、1、2月もよくなかったので息の根を止められた感じ」と述べています。帯広市では、市内では老舗大手の「クラブ」が1件は4月に廃業し、もう1件は3店を1店に縮小しました。売り上げが急減しても、人件費、店舗の家賃や電気・水道、光熱費などの固定的経費は減りません。ススキノでは、家賃の滞納がかさみ3ケ月後の6月頃には、廃業が続出するのではと心配が広がっています。消費者心理を冷え込ませた「自粛」の影響は、一般食堂や外食産業、街場のラーメン店やそば屋さん、喫茶店にまで広がっています。

〔資材の不足と高騰で仕事にかかれない建設産業〕

 建設業界の震災による影響は、これから大きな問題になります。北海道の建設の仕事は、5月のゴールデンウイーク後一斉に工事がはじまります。ところが今年は、いまになっても多くの建設業者が仕事に取り掛かれないでいます。理由は、建設資材の不足、品薄による材料の入手困難の広がりです。道内建設業の業界紙「北海道建設新聞」は、「建設資材不足じわり、コンパネ、鋼管類に品薄感」「建材ストップ、工期遅れ、資金繰り圧迫」「建築資材仕入れ難航か、分譲MS市場回復に懸念」「足場、敷鉄板調達難、合板、仮設トイレは品薄」と、4月上旬から毎週のように資材不足の現状と業界の状況を報じています。筆者が所属している北海道商工団体連合会の傘下の民主商工会には、建設業者の会員が多数加入しています。この間の聞き取から実情を紹介します。帯広の住宅建設会社を経営するOさんは、「断熱材(グラスウール)、玄関ドア、IH調理台、ユニットバス(一部のメーカー)、キッチン(1部のメーカー)コンパネ(24弌■横賢个慮物)などの資材が現時点ではない。また断熱材やコンパネ、合板、石膏ボードなどは値上げが予想される。工事途中の物件は、資材の不足で工事がストップ。完成しない。多くの業者は、今後の資材値上げによる原価の上昇を予想できず、施主との契約をためらっている。」と現状を述べています。断熱材のグラスウールは、長期にわたる住宅不況のもとで、製造メーカーはすでに早い時期から生産を縮小してきていました。そこへ一昨年以来の政府の経済対策、住宅リフォームに対するエコポイント助成の実施です。このために断熱材への需要が拡大し、品薄状況が続いていました。そこに今回の震災が起き、一気に供給が追い付かない状況になったわけです。現状の不足は深刻で、相当先になっても解消しないのではないか、と言われています。同様に寒冷地用の外壁材(サイディング)もない、と言われています。建築板金の旭川市のTさんからは、「トタンが値上がりしている。1屬△燭蝪横娃葦澎幣紂建物1件当たり平均100屬箸靴藤暇円の値上がりになっている。また、屋根の下地材も値上がりしている。」と報告があり、函館市の建具業のYさんは、「コンパネは不足だが、工事も少ないので問屋に在庫があり出回っている。しかしホーマックでは、コンパネの小売値が800円だったのが1600円にもなっている。便乗値上げなのか?」と述べています。また、旭川の足場組立の仕事をしているAさんから「足場材が一切入ってこないので仕事にならない。」との訴えがあり、業界紙は硬質塩ビ管の入手も困難になっている、とも報道しています。また宮城にある生産工場が被災しために、物置が入ってこないとのことです。こうして、建設資材の品薄は、価格の高騰と連動し続いています。
 建設業の苦境の広がりは、すでに震災以前から続いていました。すでに長い間、需要の低迷により民間の住宅やマンション、ビル建設が減少してきていたのと同時に、国や自治体の公共事業の削減が続いていることです。北海道開発局の2010年の工事契約は、3000億円を下回り昨年より27.6%も減りました。同様に北海道の10年度の公共事業も前年比11%減の3450億円で、2005年度のわずか72%にまで落ち込んでいます。今回の聞き取り調査の中でも「土木の仕事がほとんどない!」という悲鳴が上がっています。こうしたことからも、今後の道内の建設産業の前途は、非常に厳しいことが予想されます。

〔影響は、様々な業種に広がり始めている〕

 室蘭市のタイヤ販売のTさんからは、「震災による東北地方の工場被害で、合成ゴムの生産が間に合わなくなっている。これまでもタイヤは受注生産で注文から入荷まで一定の時間がかかったが、今回の震災で3週間以上かかる状況になっている。一方で、製品の値上げが続いている。今回も、タイヤの仕入れ値が1700〜2000円上がった。」と報告があります。小樽市の布団・繊維の小売業のSさんは、「布団の材料、綿の価格が上昇し、頻繁に商品の仕入れ値が上がっている。」旭川市の民商会員のラーメン店、蕎麦屋さんからも「麺やそば粉の仕入れ値が上がっている。」深川市の食堂経営のSさんも「砂糖や小麦粉、油、卵まで値上がりしている。」また、芦別市のKさんも「ラップやトレー類が倍くらいに値上がりした。」クリーニング店の会員からも「洗剤や燃料が上がっている」と、次々と資材や仕入れの価格上昇の報告が寄せられています。震災の工場被害による供給不足なのか、金融資本の投機による原油高騰や穀物の値上がりなのか、気候変動による不作の影響か、それとも危機に悪乗りしたメーカーの便乗値上げなのか、様々な要因が複合しているようにも見えますが、価格上昇の動きが顕著です。

〔道内企業過半数が予想した「需要減」は現実に〕

 帝国データバンクが3月末に行った道内企業に対する震災の影響調査では、71.3%の企業が「影響あり」と応え、なかでも過半数を超える企業は、需要が減少すると予想し、震災復興の需要の増加を見込んでいる企業は、わずか15.9%でした。調査後1か月以上を経過した今日、その予想は現実になって表れています。4月の中旬に行った北海道商工会連合会の震災影響調査でも、「津波で施設や工場が冠水し、建物や設備に被害が及んだ。原発事故による観光産業への影響拡大、一次産品の風評被害を懸念するとの声が寄せられ、企業からの資金繰りに関する相談が増加。建設業者には、資材調達が難しく、工事の延期、中止が避けられないとの見方が広がっている。」となっています。震災の道内経済への直接・間接の影響が急速に広がっています。

〔今後の道内経済の予想と国の政策の方向〕

 19日、内閣府は、1〜3月期のGDP年率3.7%減と報じました。2期連続のマイナスで、「深刻な個人消費・設備投資の冷え込み、景気底割れの懸念も」と言われています。一方、北海道経済産業局は、11日の「最近の管内経済概況」で道内の景況を「一部に持ち直しの動きが続く中で、足下は東日本大震災の影響から厳しさがみられる」とし、日銀札幌支店の「金融経済概況」(5月12日付)も、「道内の景気は、東日本の大震災に伴う一連の影響から下押し圧力がみられる。」と報じました。これら官庁の判断の良否はともかく、3月末までの道内の主要な経済指標には、すでに大きな変調が表れています。3月度の新築着工件数△9.4%、大型小売店販売額△2.0%、乗用車新車販売台数△32.8%、来道者数△27.6%、鉱工業生産指数△7.2%、同出荷指数△5.1%、倒産件数+15.6%です。一方で、消費者物価指数だけは1〜3月+2.9%で、昨年12月以降前年比プラスが続いています。
 これまで述べてきたような業界や企業、業者からの報告、上記の経済指標などの状況から見えてくるものは、明らかに需要の減退による道内の景気の後退です。企業や業者の売り上げが減少するもとで、資材や仕入れの価格上昇が懸念されます。売り上げの減少は、まずは企業の資金繰りを詰まらせ、経営危機に追い込みます。この危機を乗り越えた企業も、売り上げの減少と仕入れや経費の上昇のもとで、大幅な利益の減少に見舞われることになります。労働者の権利や雇用を守る法制が著しく脆弱な日本では、企業が直ちに賃下げ、解雇、非正規雇用の拡大などで労働者へしわ寄せを転嫁することが考えられます。この結果、需要の大部を占める勤労者の消費購買力が縮小し、さらなる内需の後退に見舞われる、という負の循環が予想されるのです。
 こうした状況が予想されるもとで、民主党政府の内需・個人消費を落ち込ませる消費税引き上げ方針は、愚策以上の何物でもありません。ましてや北海道の農業と地域経済を破壊するTPPへの参加など言語道断です。これからの震災復興や社会保障の財源は、消費税や庶民増税ではなく、国民・労働者、地域から吸い上げため込んできた大企業の内部留保や大資産家が保有する不要不急の資産を、税金や国債で吸い上げ活用すべきです。こうした資金の活用によって国民や地域にお金が循環する中で内需が再興し、地域と日本の経済は健全な循環を取り戻すことになります。

北海道商工団体連合会 三浦 泰裕氏
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