北星学園余市高等学校長 平野 純生

余市でのサクランボ狩りツアーで
 7月に余市で行われた旅システムによるサクランボ狩りツアーで、北星学園余市高等学校の56年の歩みと学校存続の危機と対応、そして生徒たちの様子について話をさせていただきました。そして私の話の後に、本校の卒業生でもある日本キリスト教団余市教会の西岡知洋牧師が自分の北星余市での高校生活を振り返っての話もしてくれました。西岡牧師は3年間私が担任したクラスにいてくれた教え子です。彼の話を聞くたびに私は、15年以上前に卒業させたそのクラスのことを思い出し複雑な気持ちになります。そのクラスは、リーダー集団を中心にまとまりが良く、おとなしい生徒たちも含めてみんなが対等に物を言い合えるクラスでした。ただ、卒業間際にクラスの委員長が、当時、学校として重大だと考えた事件への関りが分かり、学校をやめざるを得なくなりました。そのことは担任やクラスの生徒たちにとって本当にショックなことで、クラスの多くの生徒が、悲しい思いのまま卒業していきました。卒業式から15年たって同窓会がありました。その中にはクラス委員長の姿もありました。彼は、本校をやめた後十分に反省し、別の高校を卒業し大学でも学び、今は海外を飛び回るビジネスマンになっていました。
 同窓会は本当に楽しい時間となり、この同窓会のおかげで私の担任としての気持ちは少し楽になりましたが、当時感じたやりきれなさは忘れません。本校では担任とクラスの生徒が3年間、とても深くかかわるので、生徒をやめさせることになってしまった担任は、自分の指導を振り返り自問自答します。

北星余市高校の生徒たち
 さて私事を書きすぎましたので、ここで少し話を変えて本校の生徒の様子を紹介したいと思います。本校では教員と生徒の距離がとても近いと言われます。休み時間になると生徒たちの多くが当然のように職員室にやってきます。生徒同士でおしゃべりしたり、くつろいだりしています。また教員を呼ぶときも、大抵はニックネームで呼びます。「ゴリポン」とか「やっさん」など。そして世間話は「タメ口」もありです。教員は敬語を使えとは言いません。普段から生徒と対等に対話することで、大事な時に教員の思いがしっかり伝わるような生徒との関係作りを大切にしています。
 また本校の生徒たちの出身地は様々で、北海道出身の生徒は約40%弱、道外出身の生徒は約60%強です。北海道出身の生徒でも、余市からかなり遠いオホーツク管内や根室管内から入学してくれる生徒もいます。

不登校の生徒が選んでくれる理由
 遠くからでも本校を選んで入学してくれるのはどうしてなのか。生徒たちとの面談内容からおそらくこういうことだと思う理由があります。それは、「地元にいても変われないから、環境を変えることで自分も変わりたい」という思いです。中学校では不登校だった生徒でも高校生活は充実させたいと考えています。そのためには学校に行けなかった自分でも気楽に楽しく通える学校に通学したいけれど、地元の高校だと周りの人の目が気になって家から出られない。けれど自分のことを誰も知らない環境なら自分をリセットできるという思いがあり、余市で下宿生活をするなら学校に通えるだろうということです。