悪化する日韓関係のもとで

髙崎 暢

一 10月14日から4日間、ソウルを訪問した。今年は、朝鮮3・1独立運動から100年の節目に当たる年である。日韓関係史が専門の鄭在貞ソウル市立大学名誉教授の案内で、一日ソウル市内を巡り、植民地時代の歴史を振り返った。ナヌムの家で元慰安婦のイ・オクソンさんの話を聞き、1409回目の日本大使館前水曜集会に参加し、徴用工裁判の主任弁護士崔鳳泰さんとも会った。
 この旅行を通して、一日も早い日韓関係の修復・改善のために、両国政府が話し合いのテーブルにつくこと、そのために日韓の一層の友好を市民レベルで強めることの重要性を再認識した。

二 3・1独立運動とは、植民地支配を強制する日本からの独立を求める朝鮮全土に拡大した民衆運動で、200万人以上が参加したと言われ、日本の過酷な弾圧に抵抗して、数か月間たたかい続けた。その3・1運動が、民主主義と独立した統一国家を目指す朝鮮半島の人々の実践の原点であるといってよい。
 そして、いま、朝鮮半島の人々は、100年前の3・1運動を通して問われた課題の実現へ近づこうとしている。民衆運動によって文在寅政権を誕生させたロウソク革命。南北首脳会談、朝鮮半島は大きく変わりつつある。人間の尊厳と人権の回復を求める元徴用工や元日本軍「慰安婦」問題も、日本の植民地支配の屈辱(国を奪われ、人間の尊厳を奪われ、言葉や名前すら奪われた)を乗り越え、3・1運動が示した要求を実現していくたたかいである。

三 ところが、日本は、100年前の朝鮮民族の問いかけに今も応答できないでいる。今年3月、文在寅大統領が、3・1運動への日本の弾圧で、「約7500人の朝鮮人が殺害された」と演説したのに対し、安倍政権は、弾圧への反省と謝罪を公に語るべき時に、「学術的に確立された数字ではない」と文句をつけたのである。いま、日本の、日本人の民主主義意識、人権意識そして歴史認識が問われているという時代認識がない。
 そして、いまだに日本人の朝鮮民族に対する差別意識が再生産される理由は植民地支配の歴史とまともに向き合ってこなかったからだといってよい。日本人の多くは、戦争と言えばアジア太平洋戦争を思い起こすだろうが、日清・日露戦争も、朝鮮に対する侵略戦争であった。そして、1910年、「韓国併合条約」を押しつけ、朝鮮を完全に植民地化した。日本の近代は、朝鮮を踏みにじり人々に過酷な支配を強いることによって成り立ったといってよい。戦中の日本の労働力不足を強制的に動員した徴用工で賄った事実ひとつとっても明らかである。

四 日本の応答の第一歩として、朝鮮半島の非核化、平和への動きに逆行する安倍改憲を許さないことであり、安倍政治を終わらせ、歴史修正主義とけじめをつけることである。
 元慰安婦イ・オクソンさんは、開口一番、「なぜ安倍はまだいるのか。」と問い、「日本が直接謝罪するまで死ねない!」と語った。その言葉は重かった。
 水曜集会で、中1の男の子が、「すみませんということが、そんなに難しいことですか。」と発言した。そこに参加した多くの若者に日韓友好の光を見た。
 植民地支配のもとで作り出された矛盾を精算し、乗り越えようとしている朝鮮半島の人々。彼らに応答して、日本人が歴史認識や民主主義意識の今の限界を乗り越えるなら、人類普遍の原則に基づく友好の時代が始まると確信した旅であった。

ソウルの旅ミニ感想文

笹島こう

 今回の旅で心に残った言葉は、ハルモニが言われた「日本人を憎んでいるのではない。私たちは日本によって苦しんできたが、私たちではなく、日本の国民も安倍によって苦しんでいるのではないか。私たちは強制によって慰安婦にさせられたことを安倍が認めてきちんと私たちに謝ってもらいたいだけだ(略)」という深い悲しみの言葉。もう一つ「記憶されない言葉はあやまちをくり返す」(不正確)。
 韓国はしっかりとした歴史教育がされています。歴史教育というのは、こうでなければならない、ということを、この旅ではっきりと思い知らされました。知識だけの丸暗記の頭でっかちではしっかりしたとした人間が育たない。血の通った事実を教える教育。韓国という国はすばらしいし応援したいと思いました。
 今回のような旅こそ、今、日本に一番必要なことですね。この旅を企画実行して下さった高崎法律事務所・旅システムに深く感謝申し上げます。今安倍内閣は歴史の修正どころか偽造をしていると思います。教育基本法も改悪されて20年、管理教育は強まり、お友達内閣・権力にからめとられたメディア、現状の打開は容易でないように思います。
 しかしこの目・足で事実を知り、歴史の目撃者となった(矢嶋さん言)私たちは声を広げ、少しずつ(体調と相談しながら)運動をつづけていくことなのだと思います。
 「百聞は一見にしかず」も思い知りました。
 青木さんや高崎御夫妻、高崎事務所の皆様の御苦労ありがとうございました。

「韓国の旅」を終えて

森 成子

 思いがけず義兄から平和と教育を考えるツアー「韓国の旅」に誘われ・・・忘れもしない思い出深い初めての海外旅行があの冬ソナツアー、その時食べた韓国料理に衝撃を受けたことも忘れられません・・・二つ返事で「行きます」と。今回の三泊四日の韓国の旅は、鄭在貞先生の著書「旅行ガイドのないアジアを歩く韓国」の資料から、日韓の高校の教科書の史実に大きな違いがあること、3.1独立運動の発祥の地であるパゴダ公園にある「独立宣言文」が記念碑に書かれていた。これは日本留学生(早稲田大学)の李光洙が起草したものだということ、その他にも先生から直接お話が聞け韓国の歴史を知ることができたのは、何よりの財産となりました。「ナヌムの家」の93歳のハルモニにも幸い会うことができ、一言一言の重さ、戦争が残した傷痕の深さを痛い程に感じました。辛い心の叫びが胸に突き刺さりました。私の孫の為にも未来永劫平和であること戦争のないことを願わずにはいられませんでした。それから、西大門刑務所歴史館見学、「水曜行動」への参加。27年前に西大門刑務所跡地が公園になって公開されたということで多数の子どもたちが校外学習で訪れていました。その中に園児が来ていたのには驚きました。この年齢で理解できるのだろうか?と。「水曜行動」では前日お会いしたハルモニも参加されていました。ここでも驚いたことに、大人に混じって小・中・高校生が体験学習ということで先生とともに参加し、思い思いにスピーチをしていました。その中で小学生がハルモニへスピーチをしながら涙していた姿が印象的でした。ハルモニたちの想いを共にするというスピーチだということを、後で聞きました。日韓の歴史教育、人間教育の違いを目の当たりにした出来事でした。
 北朝鮮との関係、兵役義務のある韓国が置かれている状況と日本とは違うが、同じアジアで隣国でもある国同士、平和であるために学び合う姿勢は大切なのだろうと思う。
 最後に、ツアー企画は勿論のこと韓国の美味しい料理を堪能できたことも旅システムの青木さんのお陰だと感謝しています。ありがとうございました。最後の夜の韓国の居酒屋もとても楽しかったです。

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